クランク

オートバイエンジンの「クランク(クランクシャフト)」は、エンジンの心臓部とも言える極めて重要な部品です。
以下に、機能・用途・特徴を体系的に詳しく解説します。
クランクの機能
クランクシャフトは、ピストンの上下運動(往復運動)を回転運動に変換する装置です。
- ピストンが燃焼によって上下に動く
- コンロッド(連結棒)を介してクランクシャフトが回転
- この回転力がトランスミッションを通じて後輪に伝達される
つまり、クランクはエンジンの爆発力を走行力に変える変換機構です。
用途:動力の生成と伝達の起点

クランクはエンジンの動力源として、以下の役割を担います
| 用途 | 説明 |
|---|---|
| 動力変換 | ピストンの直線運動を回転運動に変換 |
| 回転出力の供給 | トランスミッションや補機類(オルタネーター、ウォーターポンプなど)へ動力を供給 |
| 慣性の確保 | フライホイールと連動し、回転の安定性を保つ |
| 振動の吸収 | バランサーやクランク角設計により、エンジン振動を抑制 |
特徴:構造・材質・クランク角
1. 構造
- ジャーナル部:軸受けに接する部分。回転の中心。
- クランクピン部:コンロッドが接続される部分。偏心して配置。
- ウェブ部:ジャーナルとピンをつなぐ板状部分。慣性質量を持つ。
2. 材質
| 材質 | 特徴 |
|---|---|
| 鍛造鋼 | 高強度・高耐久。高性能車に多い |
| 鋳鉄 | コスト重視。中低速車に多い |
| クロモリ鋼 | 軽量かつ高剛性。レース用に採用例あり |
3. クランク角(特に多気筒エンジンで重要)

複数気筒の爆発の間隔が、クランクのそれぞれの角度で変わります。
- 360°クランク:基本0°から360°ずれて2気筒目が爆発する。両ピストンが同時に上下するが交互に爆発。クラシックなフィール
- 180°クランク:基本0°から180°ずれて2気筒目が爆発する。直列2気筒でよく使われる。高回転型、振動が大きい
- 270°クランク:基本0°から270°ずれて2気筒目が爆発する。トラクション感が強く、Vツイン風の鼓動感
クランク軸は1本ですが、各気筒ごとのクランク角を変えることで、エンジンの鼓動感・トラクション・振動特性の変化に直結します。
気筒数は、単気筒・2気筒・3気筒・4気筒・5気筒・6気筒と増えていきます。
さらに、各気筒の配列が、並列・L字・V字・I字(水平対向)となります。
クランクとバランサーの関係
- クランクの回転によって生じる一次・二次振動を打ち消すために、バランサーシャフトが用いられることがある。
- 特に並列2気筒や単気筒では、振動対策としてバランサーが重要。
- 各部の締め付け具合などメンテに影響を与えますが、あえて振動を意図的に発生させ「鼓動感」を高めることもあります。
メンテナンスと注意点
- クランク自体は長寿命だが、オイル管理が極めて重要
- オイル切れや異物混入でメタル焼き付きや軸受損傷が起こると、エンジン全損の可能性も
- 高回転型エンジンでは、クランクのバランス取り(ダイナミックバランス)が性能に直結
まとめ:クランクは「動力の起点」であり「鼓動の演出家」
クランクは単なる回転軸ではなく、エンジンの性格・フィーリング・性能を決定づける中核部品です。
クランク角や材質、バランス設計によって、バイクの鼓動感や走行フィールが大きく変わります。


















































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































