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クランク

クランクシャフト
画像はイメージです。

2025年10月17日

オートバイエンジンの「クランク(クランクシャフト)」は、エンジンの心臓部とも言える極めて重要な部品です。

以下に、機能・用途・特徴を体系的に詳しく解説します。

 

クランクの機能

クランクシャフトは、ピストンの上下運動(往復運動)を回転運動に変換する装置です。

  • ピストンが燃焼によって上下に動く
  • コンロッド(連結棒)を介してクランクシャフトが回転
  • この回転力がトランスミッションを通じて後輪に伝達される

つまり、クランクはエンジンの爆発力を走行力に変える変換機構です。

用途:動力の生成と伝達の起点

クランクはエンジンの動力源として、以下の役割を担います

 

用途説明
動力変換ピストンの直線運動を回転運動に変換
回転出力の供給トランスミッションや補機類(オルタネーター、ウォーターポンプなど)へ動力を供給
慣性の確保フライホイールと連動し、回転の安定性を保つ
振動の吸収バランサーやクランク角設計により、エンジン振動を抑制

特徴:構造・材質・クランク角

1. 構造

  • ジャーナル部:軸受けに接する部分。回転の中心。
  • クランクピン部:コンロッドが接続される部分。偏心して配置。
  • ウェブ部:ジャーナルとピンをつなぐ板状部分。慣性質量を持つ。

2. 材質

材質特徴
鍛造鋼高強度・高耐久。高性能車に多い
鋳鉄コスト重視。中低速車に多い
クロモリ鋼軽量かつ高剛性。レース用に採用例あり

3. クランク角(特に多気筒エンジンで重要)

クランク角度
先頭画像を基本の0°として、2つ目のクランクのズレ角を示しています。
複数気筒の爆発の間隔が、クランクのそれぞれの角度で変わります。
  • 360°クランク:基本0°から360°ずれて2気筒目が爆発する。両ピストンが同時に上下するが交互に爆発。クラシックなフィール
  • 180°クランク:基本0°から180°ずれて2気筒目が爆発する。直列2気筒でよく使われる。高回転型、振動が大きい
  • 270°クランク:基本0°から270°ずれて2気筒目が爆発する。トラクション感が強く、Vツイン風の鼓動感

クランク軸は1本ですが、各気筒ごとのクランク角を変えることで、エンジンの鼓動感・トラクション・振動特性の変化に直結します。

気筒数は、単気筒・2気筒・3気筒・4気筒・5気筒・6気筒と増えていきます。

さらに、各気筒の配列が、並列・L字・V字・I字(水平対向)となります。

クランクとバランサーの関係

  • クランクの回転によって生じる一次・二次振動を打ち消すために、バランサーシャフトが用いられることがある。
  • 特に並列2気筒や単気筒では、振動対策としてバランサーが重要。
  • 各部の締め付け具合などメンテに影響を与えますが、あえて振動を意図的に発生させ「鼓動感」を高めることもあります。

メンテナンスと注意点

  • クランク自体は長寿命だが、オイル管理が極めて重要
  • オイル切れや異物混入でメタル焼き付きや軸受損傷が起こると、エンジン全損の可能性も
  • 高回転型エンジンでは、クランクのバランス取り(ダイナミックバランス)が性能に直結

まとめ:クランクは「動力の起点」であり「鼓動の演出家」

クランクは単なる回転軸ではなく、エンジンの性格・フィーリング・性能を決定づける中核部品です。

クランク角や材質、バランス設計によって、バイクの鼓動感や走行フィールが大きく変わります。

Posted by 夏木 陽