クラッチ

オートバイのクラッチ機構は、エンジンの力を後輪に伝えるか遮断するかを制御する、非常に重要なシステムです。
クラッチは単なる「発進・停止のための装置」ではなく、バイクの走行性能や操作性、安全性に深く関わる重要な機構です。
クラッチの基本機能と用途
- 動力の伝達と遮断 エンジンからの回転力を後輪に伝えるか、遮断するかを制御します。発進・停止・ギアチェンジ時に不可欠です。
- ギアチェンジの補助 クラッチを切ることでギアをスムーズに変更でき、トランスミッションへの負荷を軽減します。
- 半クラッチ操作 発進時などにクラッチを部分的につなぐことで、スムーズな加速が可能になります。
主なクラッチの種類と特徴

| クラッチの種類 | 特徴・用途 |
|---|---|
| 湿式多板クラッチ | エンジンオイルに浸されており、冷却性・耐久性が高く、一般的なバイクに多く採用される。 |
| 乾式クラッチ | オイルに浸っておらず、ダイレクトな操作感。レーサーや一部の高性能車に使用。 |
| 単板クラッチ | クラッチ板が1枚。自動車に多く使われ、BMWやモトグッツィなど一部バイクにも採用。 |
| 遠心クラッチ | 回転数に応じて自動でクラッチがつながる。スーパーカブやスクーターに多い。 |
| スリッパークラッチ | シフトダウン時のショックを軽減し、リアタイヤのホッピングを防止。 |
| 電子制御クラッチ(Eクラッチ) | クラッチ操作を電子制御で行う。ホンダの一部車種で採用されている最新技術。 |
クラッチの構造と仕組み

- クラッチ板(フリクションプレート) エンジンの力を伝える役割。外側の突起がクラッチバスケットと噛み合う。
- クラッチプレート 後輪に力を伝える。内側の突起がクラッチハブと噛み合う。
- クラッチスプリング 2種類のクラッチ板を押し付けて、力を伝えるか遮断するかを制御。
- 操作方法 クラッチレバーを握るとクラッチ板同士が離れ、動力が遮断。離すとスプリングの力で板同士が押し付けられ、動力が伝達されます。
特徴とメリット・デメリット
| 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 湿式クラッチ | 静音性・耐久性・滑らかな操作 | オイル抵抗による若干のパワーロス |
| 乾式クラッチ | ダイレクトな操作感・軽量 | 騒音・摩耗が早い・異物混入のリスク |
| スリッパークラッチ | 安全性向上・初心者にも扱いやすい | 構造が複雑で高価 |
| 電子制御クラッチ | 自動操作・発進が簡単 | 高価・整備が専門的 |
オートバイのクラッチレバーとクラッチワイヤーは、ライダーの操作をエンジン側のクラッチ機構に伝えるための重要なパーツです。以下に、それぞれの機能・用途・構造・特徴・メンテナンス性について詳しく解説します。
クラッチレバーの機能と特徴
機能・用途
- ライダーが手で操作することで、クラッチを「切る(動力遮断)」または「つなぐ(動力伝達)」動作を行う。
- 発進・停止・ギアチェンジ時に必須の操作部。
主な特徴
- 人間工学に基づいた形状:握りやすく、操作しやすいように設計。
- 調整機構付き:レバーの位置や遊びを調整できるタイプも多い。
- 素材の違い:アルミ製、樹脂製、可倒式など、用途や好みに応じて選べる。
クラッチワイヤーの機能と特徴(ワイヤー式クラッチ)

クラッチレバーとワイヤーは、ライダーとマシンをつなぐ「感覚の橋渡し役」です。操作感やフィーリングにこだわるライダーにとって、非常に重要なパーツです。
機能・用途
- クラッチレバーの動きを物理的にエンジン側のクラッチユニットへ伝える。
- ワイヤーを引っ張ることでクラッチスプリングの力を緩め、クラッチを切る。
主な特徴
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | インナーケーブル(鋼線)+アウターケーブル(保護チューブ) |
| メンテナンス性 | 定期的な注油が必要。摩耗や伸びによる調整も必要。 |
| 操作感 | 機械的なフィーリング。取り回しによって重さや感触が変化することも。 |
| コスト | 安価で構造がシンプル。修理・交換も容易。 |
| デメリット | 長期間使用で摩耗・劣化しやすく、操作が重くなることがある。 |
油圧式クラッチとの比較

| 項目 | ワイヤー式クラッチ | 油圧式クラッチ |
|---|---|---|
| 操作力 | 車種によっては重くなることがある | 軽くて安定した操作感 |
| メンテナンス | 注油・調整・交換が必要 | 基本的にメンテナンスフリー |
| コスト | 安価で構造が単純 | 高価で部品点数が多い |
| フィーリング | 機械的でダイレクトな感触 | 滑らかで安定した操作感 |
メンテナンスのポイント
- 注油:インナーケーブルに定期的に潤滑油を差すことで操作が軽くなる。
- 遊び調整:クラッチの切れ・つながりのタイミングを最適化するために必要。
- 交換目安:操作が重くなったり、ケーブルに亀裂や摩耗が見られたら交換。
もちろんです!オートバイのAT車(オートマチックトランスミッション車)におけるクラッチ機構は、MT車(マニュアル)とは大きく異なり、ライダーがクラッチ操作をする必要がないように設計されています。以下に、AT車のクラッチの機能・用途・構造・特徴を詳しく解説します。
AT車におけるクラッチの基本機能と用途
AT車のクラッチは「見えないけれど、確実に働いている縁の下の力持ち」。快適性と操作性を両立しつつ、技術の進化によってスポーツ走行にも対応できるようになってきています。
- 自動で動力の伝達・遮断を制御 ライダーがクラッチレバーを操作する代わりに、エンジン回転数や車速に応じてクラッチが自動的に接続・切断されます。
- 発進・停止・変速をスムーズに 発進時や停止時、変速時にクラッチが自動で働くことで、エンストの心配がなく、初心者でも安心して運転できます。
- 操作の簡略化 クラッチ操作が不要なため、アクセルとブレーキだけで運転可能。特に街乗りや通勤用途に適しています。

主なクラッチ機構の種類(AT車)
| クラッチ方式 | 特徴・採用車種例 |
|---|---|
| 遠心クラッチ | エンジン回転数が上がると遠心力でクラッチがつながる。スーパーカブなど。 |
| CVT(無段変速機) | Vベルトとプーリーで構成され、変速が滑らか。スクーターに多く採用。 |
| DCT(デュアルクラッチ) | 2つのクラッチで奇数・偶数ギアを分担。ホンダの大型ATバイクに採用。 |
| 電子制御クラッチ(Eクラッチ) | クラッチ操作を電子制御で行う。ホンダCBR650Rなどに搭載。 |
AT車クラッチの構造と仕組み(例:CVT)
- ドライブプーリーとドリブンプーリー エンジン出力に応じてプーリーの幅が変化し、Vベルトの位置が変わることでギア比が連続的に変化。
- クラッチユニット(遠心クラッチ) 回転数が一定以上になるとクラッチシューが外側に広がり、クラッチベルに接触して動力が伝達される。
AT車クラッチの主な特徴とメリット・デメリット
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 操作性 | クラッチ操作不要で初心者にも扱いやすい | 操作の自由度が低く、スポーツ走行には不向き |
| メンテナンス | 構造がシンプルで耐久性が高い(遠心クラッチなど) | 消耗部品(Vベルトなど)の定期交換が必要 |
| 走行フィーリング | 滑らかで快適な加速が可能 | ダイレクト感やエンジンとの一体感が薄れることも |
代表的なATクラッチ搭載車種
- ホンダ スーパーカブ:遠心クラッチ+ロータリー式ギア
- ヤマハ シグナスX:CVT方式スクーター
- ホンダ NT1100 / アフリカツイン:DCT搭載の大型ツアラー
- ホンダ CBR650R(Eクラッチ仕様):電子制御クラッチ搭載スポーツモデル

まったく新しいトランスミッション Honda DCT搭載。


















































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































